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雇用保険制度の見直しについて報告/労政審部会 2009年1月13日

労働政策審議会の雇用保険部会は12月25日の会合ではセーフティネット機能としての雇用保険の強化を図るための話し合いがなされましたのでご紹介します。

・保険の加入条件のうち「1年以上の雇用見込み」を「6カ月以上」に改定。
・再就職が困難な場合の失業給付日数の延長、
・再就職手当の受給要件の緩和、
・育児休業給付の拡充
・雇用保険料率の引下げなどを盛り込んでいる。
※雇用保険料率については、労働者代表委員から「引き下げるべきではない」との意見もありました

<雇用保険部会報告>
第1 現状及び課題

○ 現下の雇用失業情勢をみると、有効求人倍率は11ヶ月連続して1倍を下回り、企業の
倒産件数も増加傾向にあるなど、雇用失業情勢は下降局面にあり、さらなる悪化も想定さ
れるところである。このことは、労働市場において、派遣労働者、パートタイム労働者、
契約社員等の非正規労働者が増大する中で、特に、これら非正規労働者の雇用調整の動き
の急速な拡大として顕在化し、非正規労働者に大きく影響を与えつつある。
○ また、雇用失業情勢については、特に厳しい地域があるほか、若年者についても、年長
フリーター等が依然として多い等厳しい状況が続いている。
○ 一方で、雇用保険制度については、昨年までの雇用失業情勢の改善傾向及びこれまでの
制度改正等を受け、平成19年度決算における収支状況は改善しているが、雇用失業情勢
の更なる悪化が見込まれる中で、今後支出が大幅に増加することも予想されるところであ
る。
○ このような状況の中で、平成20年10月30日には、政府全体として生活支援策の強
化のための経済対策(以下「生活対策」という。)が決定され、雇用保険についても、セー
フティネット機能の強化等とあわせ、家計緊急支援対策の一環として、国民(家計と企業)
の負担軽減の観点から、平成21年度限りの雇用保険料率の引下げについて、関係審議会
において労使と十分協議した上で検討、結論を得ることとされている。
○ 加えて、派遣労働者や契約社員の雇止め、新卒者の内定取消等現実に深刻な問題が生じ
ていることに鑑み、政府は一体となって必要な施策を実施することを決めている。
○ このような状況を踏まえると、雇用保険制度としても、財政の健全性を維持しつつ、非
正規労働者の増大にも対応しうる雇用のセーフティネットとして有効に機能するようにす
るとともに、雇用失業情勢の悪化等の影響を深刻に受ける者等への支援を重点的に強化し、
安定した雇用に向けて、早期再就職をより一層促進することが緊急の課題となっている。
○ このため、当面の緊急対策としての暫定的な措置も含め、次のとおり、雇用保険制度の
機能強化を中心とした見直しを行っていくことが適当である。

第2 雇用保険制度の見直しの方向

1 セーフティネット機能の強化について

(1)非正規労働者に対するセーフティネット機能の強化
○ 非正規労働者が増加する中で、昨今、雇用失業情勢の悪化の影響が、いわゆる倒産、解
雇等による離職に限らず、雇止め(労働契約を更新しない)という形で出てきている。こ
のような状況を踏まえると、こうした非正規労動者についても必要な給付がなされること
が必要である。
○ いわゆる倒産、解雇等による離職者(特定受給資格者)については、被保険者期間が6
月あれば受給資格が得られ、また、所定給付日数についても手厚い取扱いとされている。
これを踏まえ、被保険者期間が短い(1年未満)者であって、希望したにもかかわらず、
労働契約が更新されなかったため離職した有期雇用者等についても、特定受給資格者と同
様に、被保険者期間6月で受給資格が得られるようにすべきである。
○ これらの者の所定給付日数については一般の受給資格者と同じとすべきであるが、現下
の雇用失業情勢の悪化に鑑みると、特に非正規労働者に対して十分なセーフティネットが
必要であることから、暫定的に、特定受給資格者と同じ取扱いとすべきである。また、こ
れにあわせて、被保険者期間1年以上であって、3年未満で希望したにもかかわらず、労
働契約が更新されなかったため離職した有期雇用者の所定給付日数についても同様に、暫
定的に、特定受給資格者と同じ取扱いとすべきである。なお、これら暫定的に措置を講じ
る期間としては、3年とすべきである(以下(2)、(3)においても同じ。)。
○ さらに、労働契約が更新されることが明示されていたにもかかわらず、これが更新され
なかったため離職した有期雇用者については、被保険者期間の長短にかかわらず、特定受
給資格者とすべきである。
○ 加えて、現在、雇用保険の適用については、運用上「週所定労働時間20時間以上、1
年以上の雇用見込み」という適用基準が設けられているが、特に、労働契約の期間が1年
未満の有期雇用者の中には、「1年以上の雇用見込み」の要件のために適用が受けられない
者が存在する。
○ こうした者に対してもセーフティネットが必要であり、雇用保険制度において適切にカ
バーできるよう、給付と負担のバランスや、モラルハザードが起きないようにすることも
考慮しつつ、現行運用上の適用基準の「1年以上の雇用見込み」の要件については、「6ヶ
月以上の雇用見込み」に改めるべきである。なお、その際、中小企業をはじめ、手続面等
の負担増になることにも留意し、適切な周知を図っていくことが必要である。

(2)再就職困難者に対する支援の強化

○ 雇用失業情勢が悪化する中で、基本手当の支給が終了しても再就職が困難な場合が想定
される。特に、雇用失業情勢の影響を考慮すると、倒産、解雇等によって離職した者(特
定受給資格者)や上記(1)において特定受給資格者と同じ取扱いとすべきとした者に
ついては、重点的に再就職の援助を行う必要があると考えられる。
○ このため、これらの者について、暫定的に、個別に延長して給付が受けられるようにす
べきである。
○ 具体的には、所定給付日数が短い年齢層や雇用失業情勢の悪い地域等の求職者とし、公
共職業安定所長が必要と認めた者とすることが適当である。また、延長日数については、
この趣旨が安心して就職活動を行うことができるようにすることであることに鑑み、また、
基本手当支給終了後の就職者の就職時期や状況も勘案すれば、60日とすることが適当で
ある。
○ なお、この場合についても、職業紹介等を拒否する場合にあっては延長給付の対象とせ
ず、また、延長中である場合は、以後の支給はしないこととすべきである。

(3)安定した再就職に向けたインセンティブの強化

○ 雇用失業情勢が悪化し、今後の離職者の増加が予想される中では、必要な雇用機会を創
出するとともに、安定した再就職に向けてのインセンティブを強化することが必要である。
このためには、雇用保険二事業による対策や産業政策等により雇用創出を行うべきである
が、これとあわせ、再就職に向けてのインセンティブ強化のため、再就職手当についても、
暫定的に「所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上の残日数」があることとの受給要
件を緩和し、「所定給付日数の3分の1以上」残日数があれば受給要件を満たすこととすべ
きである。あわせて、給付率についても残日数に応じて、暫定的に残日数が3分の2以上
の場合には50%、3分の1以上の場合には40%に引き上げるべきである。
○ また、就職困難者について再就職の際の初期費用を支援する「常用就職支度手当」につ
いても、暫定的に「40歳未満の者」についても支給対象とし、給付率を40%に引き上
げることにより、さらに安定した再就職に向けたインセンティブが高められるようにすべ
きである。
○ 加えて、安定した再就職に向けては、必要な職業能力を身につけることが重要であるこ
とから、安心して必要な職業訓練を受講することができるよう、長期間の訓練を含め訓練
メニューを充実し、受講を訓練延長給付によって支援するとともに、さらに職業訓練に必
要な諸般の負担を軽減することができるよう、職業訓練を受講する者に対し、暫定的に受
講手当の額を引き上げる(具体的には日額500円を700円に)こととすべきである。

2 育児休業給付の見直し

○ 育児休業給付(育児休業基本給付金、育児休業者職場復帰給付金)については、平成1
9年改正において、平成22年3月31日までに育児休業を開始する者までの措置として、
暫定的に育児休業者職場復帰給付金の給付率を引上げている。これについては、少子化対
策としての要請等も踏まえると、暫定措置を当分の間延長し、雇用保険制度として対応を
図ることはやむを得ないものと考える。
○ また、育児休業基本給付金及び育児休業者職場復帰給付金を統合して、育児休業中に支
給することについては、育児休業中の所得保障の観点からは望ましいとする意見もある一
方で、職場復帰率が8割半ばで推移しており、雇用の継続を図り、職場復帰を支援するこ
とを目的とし、雇用保険制度で措置している育児休業給付の趣旨からは、両給付を統合す
ることには慎重であるべきとの意見や統合するのであれば休業後に復帰しない場合は職場
復帰給付金分を返還することも盛り込んだ制度とすべきとの意見がある。
○ しかしながら、雇用の継続を図ろうとする育児休業取得者に対する支援としては、育児
休業給付以外にはないのが現実であり、育児休業取得促進に果たす育児休業給付の役割に
も強い期待があることを踏まえれば、これを統合し、休業中に支給することもやむを得な
いものと考える。なお、統合に当たっては、モラルハザードが起きないよう、制度の周知
に努めることに加え、制度の運用状況も見定めるべきである。
○ なお、育児休業制度については、労働政策審議会雇用均等分科会において見直しの議論
が行われ、?父母ともに育児休業を取得する場合に休業取得可能期間を子が1歳2ヶ月に
達するまでに延長すること、?産後休業中に父親が育児休業を取得した場合に再度取得を
認めること、?保育所等に入所申請を行ったが当面入所できない場合等に再度取得を認め
ること、を内容とする育児休業の範囲拡大が、平成20年12月25日付けで建議された
ところである。
○ この建議を踏まえ、雇用保険制度においても、育児休業を取得しやすくし、その後の円
滑な職場復帰を援助、促進する観点から、新たに育児休業の対象となる上記の場合につい
て、育児休業給付の対象とすることとすべきである。

3 雇用保険料率について

(1)平成21年度の失業等給付に係る雇用保険料率について
○ 昨年までの雇用失業情勢の改善傾向等を受け、平成19年度の決算後においては、積
立金残高は約4兆8,800億円となったところである。しかしながら、現下の雇用失
業情勢は急速に悪化しつつあり、今後給付が大幅に増加することも予想される。

○ 一方で、「生活対策」においては、家計緊急支援対策の一環として、国民の負担軽減の
観点から、平成21年度の失業等給付に係る雇用保険料率について、弾力条項による引
下げ幅を超えて0.4%までの幅で引き下げることを早急に検討することとされたとこ
ろである。
○ 雇用保険財政の過去の経験や本来の保険制度の趣旨等からすれば、現在のように雇用
失業情勢が急速に悪化しつつある時期には保険事故である失業が増加することが容易に
予想される中で、雇用保険料率の引下げについては、本来これを行うべきではなく、慎
重に対処する必要があるが、一方で、国民の負担軽減についての政府全体としての強い
要請があること等を勘案すると、特例的に平成21年度に限って、失業等給付に係る雇
用保険料について、弾力条項による引下げ幅を超えて0.4%引き下げることとするこ
とも、やむを得ないものと考える。
なお、労働者代表委員より、雇用保険料率について、これを引き下げる場合や引き上
げる場合には本来は合理的な理由が必要であり、現在の状況においては、引き下げるべ
きでないとの意見があった。

(2)平成21年度の雇用保険二事業に係る雇用保険料率について

○ 積立金と同様の状況のもと、平成19年度の決算後においては、雇用安定資金残高は
約1兆700億円となったところである。その一方で、急速に悪化しつつある雇用失業
情勢の下で、雇用保険二事業による雇用対策を重点的に実施していくことが必要となっ
ている。
○ こうした状況も勘案し、平成21年度の雇用保険二事業に係る雇用保険料率について
は、現行の弾力条項に則った取扱いとすべきである。

4 今後の課題

○ 平成22年度以降の雇用保険料率のあり方や、平成19年1月9日の雇用保険部会報
告において「今後の課題」とされた65歳以降への対処等については、今後の雇用失業
情勢や雇用保険の財政状況を見極めつつ、引き続き検討すべきである。

Name avantistaff : 2009年1月13日 09:07


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